実物大ペーパーモデル

人間中心設計に関する終日のイベント「HCD-Net関西フォーラム 2017」のうち、午前のワークショップ「実物大ペーパーモデル」講座に参加してきた奮闘記。午後も目白押しだったけど書いていたら長くなったので分けた。

いきなりカッターの使い方

これまで、製品・サービスが提供するユーザー体験に思いを馳せてきた。ユーザー体験をお届けするには実体のある「モノ」に落とし込まないといけない。
だけどモノづくりはやっかいで、工数・時間をつぎ込まないと体験できるレベルまで仕上がらないくせに、作ってしまうと後戻りができない。
そこで、実体として触れる「プロトタイプ」をつくり、最終製品を前倒しで体験させて評価を得る「プロトタイピング」に取り組む。

混同しやすいけれど、今日の講座は「プロトタイピング」ではなく、「プロトタイプ」作成だった。潔いくらい技能の習得に振り切っていて、いきなりカッターの持ち方から始まる。持ち物が「A2のカッターマット」というのもブッ飛んでいて素敵。

「ズバァァン!と切ればいいんです」というスパルタ指導を受け、いざモデルボードを試し切りするも、斜め45度に切るのは素人には難しくて接合面が直角にならない。

厚みを考慮して刃の角度に注意しなければならないのは、先月のDIYワークショップの丸ノコに通じるぁと思い出す。人生に迷うこともある私だけど、迷いがあると綺麗に切れない。


実物大は関係者を雄弁にさせる

ワークショップのお題は「ロボット手術台」のアーム。なるほど、こんなに大きいと3Dプリンターよりもモデルボードで作った方が安く早く上手いのか。
それにしても、私にとっては関係者が身近にいて馴染みあるお題だったけど、参加者はこのマニアックさに付いて来れるのか!??

さて置き、講座の中で唯一「プロトタイピング」について言及していた「実物大は関係者を雄弁にさせる」という教えについては、ぜひ書き留めておきたい。
画面上の絵を見せられながらインタビューを受けた人は、頭の中で現実世界に出てきた状況を想像するという認知的な負荷が強いられる。一方で、実物大であれば自分がプロトタイプの前に立つだけで、「あと2cm高い方がよい」という細かい意見まで話すことができる。

デザイナーがよく絵を描くのは、自分の頭の中にある考えを現実世界に近づけて、安く早く上手く相手まで伝達する手段だと捉えている。実物大のプロトタイプは、もう一歩具現化に近づける手段のように感じられた。
また、以前に読んだ書籍「シンギュラリティ」の中で、人工知能が人間を超えるまでの過程で、身体を持つ必要があるという話があった。うろ覚えながら、身体性を持って外界と触れることが重要という意味でも、「実物大」である意義がありそう。


取り回せるサイズに分けて細かい方から切る

モデルボードに型紙を貼ってカッターでどんどん切ってゆく。このとき、パーツごとに切り離し、細かい方から切るというのがコツのように思えた。小さいデザインナイフでミシンみたくシコシコ上下しながら切り落とす。

切り離した方が良い理由は、小回りがきいて取り回しが楽だから。DIYで木工をやったときに、首の皮一枚を切り離すところで重みで折れて汚くなった苦い経験からも学んだ。

細かい方から先に切った方が良い理由は、パーツが大きいうちの方が型紙が安定してくっついているから。美術館で見た切り紙を自分でもやってみた中から学んだ。

これまで迷走気味にあれこれ取り組んできたけれど、別の機会で得た教訓が持ち運びできるスキルだと気付いたことや、プロトタイプを作ってプロトタイピングするという本業に還元できる可能性を掴めたことは、自分の中では刺激的だった。


秘伝の技をいきなり学ぶ

「教科書通り」と「秘伝の技」のうち、実務で編み出した後者「秘伝の技」を惜しみなく伝授するワークショップだった。写真は、手っ取り早く両面テープを付ける技。

モデルボードの組み立てにおいて、ボンドを付けてから乾くまでタイミング待って、接着するというのが「教科書通り」
今回の講座では、接着剤が乾くのを待たず、直角三角形の固定材とともに両面テープで貼ってしまい、ボンドが乾いて頑丈になるのを待つ「秘伝の技」。

カセットテープのケースにヤスリを巻くとちょうど良いなんてテクニックも、めちゃくちゃ「秘伝の技」だなぁ。


プロトタイプに愛着が湧いてくる

モデルボードで骨組みを作った後は、スチレンボードをぐるっと巻いて縁を切り落とす。

この工程だけは取り返しが付かない一発勝負なので思い切りが必要。

出来上がったロボットアームがこちら。昨今のプロトタイプは、よりラピッドな方向に向かっているけれど、2時間で作れるとは言えけっこう丁寧なつくりだった。

体験してみて駄目だったら気軽に捨てられる運命にあるプロトタイプなんだけど、自ら丁寧に作ると愛着が湧いてくる。

巨大なカッターマットと共に謎の物体を持って電車で帰宅し、我が家のダイニングで照明に生まれ変わって活躍している。

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